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アメリカ社會醫學の瞥見
橋本 寛敏
1
1聖路加國際病院
pp.9-10
発行日 1950年7月15日
Published Date 1950/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200671
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アメリカを一寸旅行して來たが,廣い國だから,3ヶ月の間に何も彼も觀るわけには行かない。公衆衞生は私の專門外の領域ではあるし,時を同じくして,慶應の草間博士も視察旅行をして居ることだから,公衆衞生に對しては全く無關心の態度を以て視察して歩いた。ボルチモーアではジョンスホプキンス大學に行つたついでに公衆衞生學校には立ち寄り,學校内の活動を一通りに參觀した。しかし教壇では,私の興味をもつ,病院管理のクラスにだけ出席したので,公衆衞生の動向などは少しもわからない。又他の醫科大學を歴訪した際にも,25年前,公衆衞生が脚光を浴びて發展しつゝある時代とはちがつて,今は公衆衞生學は極めて普通な學科だからこちらから,特別に訊かなければ話題にはならない。都市の役所の衞生課の試験所が大學の内に設けられて,學内の教育陣も設備も完全に利用して,着々實績を擧げて居る話を聞かされた位のものだ。
もう一つは,一般臨床醫學の諸學科を教える時にも,病院で診療を實施する時でも,公衆衞生の觀念が臨床家の腦裡に溶け込んで居て,個人を對照として診療するにも公衆衞生の一端を實現するに力めて居ること確かであつた。患者もその家族も,病氣の最中及び回復期には,病氣の豫防,健康保全増進に就いて最も關心が深い。この機會に乗じて家族或は社會公衆に關する衞生を實行させる樣に指導することは極めて賢い。必ず効果がある。臨床科の醫師も看護婦もこの方面に對する努力は明かに認められた。
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