講座
社会心理學の話(その3)—パーソナリテイのなりたち
中野 卓
1
1教育大学
pp.34-40
発行日 1954年11月10日
Published Date 1954/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200839
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習慣と慣習前号で見てきたような方法で学びとられた行動様式は,それが或る人の行動において幾度も繰り返されると,「習い性となる」といわれるように,その人の身に付いて,その人の「習慣」と呼ばれるものとなる.早起きのくせとか,きちようめんなくせとか,てれると鼻の上をかくくせとか,こういう個人の習慣のことを,とくに「習慣」という術語であらわすことにする.子供の「しつけ」も,こうして親が一定の行動樣式をその子の身についた「習慣」にさせようとするこころみである.
ところで,個人のこういう「習慣」は多分に,その人の属している社会に一般的であるような一定の行動樣式の基準の枠によつて規制されているものである.ある社会には,その社会の組織またその歴史的な変化の経過に即して,これに対応する行動樣式の基準となるものが,誰がつくつたともなしに自然発生的に存在している.それは,その社会の組織をその社会の内部にあつて支えている社会的な諸条件,また外部からこれを規定している社会的諸条件に対応して発生したものであるから,同じその社会に属するすべての人々の習慣に共通なものを与え,これによつてその社会にゆきわたつて行われる基準的な行動様式を成り立たせているのである.このように,ある社会において一般的に行われている自然発生的な行動様式の基準を,我々は「慣習」(習慣ではなくて)と呼び区別している.
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