2頁の知識
結核の化学療法と耐性
小酒井 望
1
1国立東京第一病院検査科
pp.26-27
発行日 1954年10月10日
Published Date 1954/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200819
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抗結核剤として今日広く使用されているストレプトマイシン,パス,イソニコチン酸ヒドラジッド,チビオンの4種薬剤の中で,ストレプトマイシンとヒドラジツドは速効性である一方,結核菌が耐性になり易いし,パスとチビオンには耐性菌が出来にくい代りに,これら薬剤は遅効性である.いま空洞があつて,菌をかなり多く出している慢性肺結核患者に,それぞれこの4種薬剤を毎日投与したとする.即ちストレプトマイシンは1日1gを筋注,ヒドラジッドは0.2g,パスは10g,チビオンは0.1g内服させる.ストレプトマイシン,ヒドラジッド投与の場合は,早いものは20〜30日で耐性菌が見られ,40日で半数以上が耐性となる.パス,チピオンでも100日を超えると耐性菌が見られる樣になり,チピオンでは150日以上になると半数以上が耐性となる.これら薬剤での治療の経過をおつて耐性獲得の模樣を観察すると,薬剤を投与し始めれば,痰の中の菌が次第に減少し,血沈,痰の量,せき,その他臨床症状が改善している.ところが間もなく痰の中に耐性菌が見出される樣になると,痰の中の菌数が増加し始め,それに伴つて耐性菌の割合も増す.痰量もふえてくる.やがて今迄改善していた臨床症状も再惡化してくる.即ちこの患者はこの薬剤に「耐性になつた」といわれる.
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