TOPIC
多剤耐性結核菌
宍戸 春美
1
1国立療養所東京病院呼吸器科,臨床研究部
キーワード:
多剤耐性結核菌
,
一次結核
,
院内感染
,
AIDS
Keyword:
多剤耐性結核菌
,
一次結核
,
院内感染
,
AIDS
pp.915-916
発行日 1993年8月15日
Published Date 1993/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901649
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世界的規模でみると,現在結核菌は毎年250万~300万人を死亡させる.先進工業国では過去の感染症とみなされつつあった結核が,最近,特に都市部で再び問題となっている.米国では,19世紀半ばから減少してきた結核が1984年から横ばいとなり1980年代後半では上昇に転じて現在に至っている.この主因はAIDS(後天性免疫不全症候群)患者およびHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者の急増である.これらの患者では,従来と同様な二次結核に加えて,多くの患者が一次結核として発症することが特徴的である1).
さらに困ったことに,HIV感染の拡大は,多剤耐性結核菌の急増をもたらしたのである.わが国のAIDS/HIV患者の結核では,自験例も含め多剤耐性結核菌の感染はまだ認められてはいないが,米国では非常に深刻な問題となっている.米国では1950~86年の調査で耐性結核患者の割合は不変または減少していたが,ニューヨーク市での耐性結核に関する最近の研究2)では,初回治療例で1剤以上の耐性菌が1982~84年の10%から1991年の23%へと増加した.HIV感染者,結核既治療例ならびに注射用薬物常用者が耐性結核の危険因子である.
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