論説
公衆衞生又は公衆衞生學について
戸田 正三
1
1京大
pp.65-67
発行日 1948年12月25日
Published Date 1948/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200376
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日本憲法は第25條に『すべて國民は健康で文化的な最低限度の生活を營む權利を有する。國はすべての生活部面について社會福祉,社會保障及び公衆衞生の向上及び増進に努めなければならない』と定めたことは皆御承知のはずであるが,私は,これはペルリ提督來朝以來最も上等の舶來品であると思つている。日本憲法もやがて政變の時期が來るだろうが,此精神は現在及び將來の國民の爲め是非保存して欲しい。ところが國民も官公吏も,それがあまり上等な舶來品であるがために,頭にピンとこない。丁度,毎日3度白米飯をとつて頑固な榮養不良に陷つて居る者に上等な西洋料理を與えたようなもので満腹できない點である。又國民經濟の現状から見て直ちに出現することの出來ない點も多々ある。先づ幼少よりの教育と百年の大計をたてて,此權利と義務の遂行とに民公一途,最善の努力を拂うべきである。
中にも,公衆衞生のことに關しては,今尚お國民は一樣に五里霧中である。何か新しい物でも生れたように,變な質問をする人が多い。醫學を修めた者にも斯樣な點がまゝあるので,一筆啓上,公衆衞生の定義と意義とについて些か拙見を記す。幸ひ讀者諸君より御批評賜らば幸甚である。
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