隨筆
日本の女性の生活の盲点
石垣 綾子
pp.32-35
発行日 1954年3月10日
Published Date 1954/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200698
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日本の女性はかなり年をとつても,つやつやした,滑めらかな肌をしています.外人のピンクかかつた白い肌は,若いときにはすき通るような美しさですが,日本の女性にくらべると,ずつと早く,そのやわらかい皮膚は年をとつてしまうようです.17,8才から,25才ぐらいまでは,欧米人の肌は,見ごとな美しさに,ひきしまつていますが,30才近くにもなると,こまかいちり面しわが,目のふちのあたりから,しだいにひろがり出して,皮膚がなんとなく,たるんできます.
そこへゆくと,私たち東洋人の肌は,雨や風や,太陽の熱にたやすく痛みつけられない,抵抗力をもつているように思います.これは自然のめぐみであるのか,どうかは知りませんが,白人ほど肌の白くない,オリーヴ色の私たちの皮膚はちりめんじわが,あれほど目立つて小波のように,たつてきません.皮膚のつやつやしさは,私たちの持徴であると思いますが,案外,そのことに気がついているかたは少ないのです.欧米人とみれば,アジア人より美しいものときめこんでいる先入主があるために,気がつかないのかもしれません.わたくしは長いこと外国でくらして,日本に帰つてきたとき,中年の女性の皮膚は,あちらの女性にくらべて,ずつとわかわかしいのにおどろきました.
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