講座
ほめることの教育的意義
井坂 行男
1
1東京教育大学
pp.10-13
発行日 1954年2月10日
Published Date 1954/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200678
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人間--特に子どもを扱う時,子どもに何かをさせようとする時,よく用いられる手段が2つある.その1つは,ほめること(賞)であり,他の1つは‘叱ること(罰)である嚴密にいえば,ほめること=賞ではなく,賞め方は範囲が広い.例えば是認,称讃,賞与などはみな賞と考えられるが,ここでは,これらを包括して,"ほめる"ことと考える.同樣に,罰の形も,否認,叱責,処罰などいろいろあることはいうまでもない.
今の教育では,子どもに何かをさせようとする時に,なるべく子ども自身を内から動かし,何かに向つて行動を起そうとする状態をその内面に引き起すようにすることを原則としている.これをテーティベーション(動機づけ)というが,賞罰は,この動機づけの手段として用いられることが多いのである.そのようなことが行われるのは,人間は,快の情緒を伴なうような行動を選び,不快や苦痛を伴なうような行動を避けようとするはたらきがあるとする.いわゆる"快苦の原理"が,基本的に人間の行動を支配しているという前提に立つてであることはいうまでもない.
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