世界の波
オーストラリアとの真珠貝爭い国際裁判に
末松 滿
1
1朝日新聞東京本社
pp.54-55
発行日 1954年1月10日
Published Date 1954/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200669
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オーストラリアの北,アラフラ海の海底には,七色に光るという眞珠貝が住んでおり,これを採取するのは日本人特に紀州熊野灘漁師の特技として,数10年来,海国日本の誇りでもあつた.今年は職後はじめて,実に13年ぶりに採取船団をくり出し,1,200トンを目標に操業していたが,突如オーストラリア政府が「アラフラ海底の眞珠貝はオーストラリアのものなり」と言い出し,10月12日から日本漁船を取締りはじめた.
眞珠貝の豊富な海域から追つぱらわれたため,採取成績は一挙に10分の1に減つてしまい,10日間でようやく1トンあまりというみじめなことになり,これではとても操算がとれぬので,豫定の11月末までの操業を10月一ぱいで切り上げ,母港串本へ帰つてきた.母船エビス丸が200トン,残る25隻の採取船はいずれも50トンに足らぬポンポン船である.これで太平洋5,000キロの荒波をのりこえるのだから,まさに文字どおり海の勇士といわねばならない.
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