とびら
セラピストよ,貝になるな
石神 重信
1
1防衛医科大学校
pp.369
発行日 1986年6月15日
Published Date 1986/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103570
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PT,OTの養成校が増えて,一時期のセラピストの不足も無くなってきた.国公立の病院ではほぼ定員は埋っていて,セラピストが働く場所を選ぶということは段々難しくなってきている.最近は,老人病院などへの就職も多くなってきた.リハビリテーション(以下リハと略す)関係者の一人としてセラピストの職域が増えることは嬉しい限りであるが問題がないわけでもない.寝かせ放なしや薬づけの老人医療に対しての社会的批判が強くなったことから,見せかけだけのリハ病院と称する長期療養施設や老人病院が増えてきた.これらの施設では施設基準にあったセラピストの数や設備であればよいといった経営的センスだけが先行してしまい,本来は社会復帰を目的とするリハが,収容医療の道具として使われてきている.ここでは患者の機能的レベルから退院が決まるのではなく,病院経営維持を第一として空床にさせないために次の患者がはいるまで,退院をさせずに長期入院させて置く.この傾向はすでに一部のリハ病院にもでてきている.リハの低医療費はこれらの収容医療を是認させ,逆に収容医療がリハの医療費の適正化を抑える結果となってきている.勢い,セラピストが入院期間や到達すべきゴールについてコメントができなくなり黙って治療だけをしていればよいといった病院が多くなってきている.
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