連載 いのちの詩を読む・11
貝が歌うとき(羽一枚/高橋順子)
新井 豊美
pp.868
発行日 1988年11月25日
Published Date 1988/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207497
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手渡された一枚の羽。それはオフィスでのことだろうか。その羽をめぐって、作者の想いがわずか十行の詩の中で余情ある美しく小さなドラマになっている。
一連目では、舗道に落ちていた羽を拾い作者に贈ったひとの行為がそのままに語られ、二連目ではその行為と心の動きを自分の中であれこれと想像する作者の想いが、そして三連目では思いがけぬ贈物に触発された心の飛躍がごく簡明に語られているが、とくに、三連目から三連目への行間には語られなかった言葉が、語られないまま高い圧力で凝縮され最後の一行に鮮やかに放たれている。
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