講座
大脳の働き
時実 利彦
1
1東京大学
pp.10-14
発行日 1953年9月10日
Published Date 1953/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200587
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パリ自然史榑物館教授のカミーユ・アランブールが"人類の誕生"という書物の中で,人間が他の靈長類と区別できる持徴の一つに頭蓋腔と脳がよく発達している点をあげている.たしかに人間は他の動物と比較にならない程よく発達した複雜な構造の脳をもつている.しかし人間の脳がよく発達しているといつても,その絶対的容積が大きいのではなく身体全体に比較して相対的に大きな容積の脳をもつており,特に脳のある部分が広い部位を占めているためである.
人間の脳は,終脳,間脳,中脳,後脳,延髓の5つの部分に大別される.終脳はさらに大脳皮質と大脳基底核とに分れており,間脳は終脳につづく部分であつて,視床と視床下部とからなつている.間脳につづいて中脳があり,きらに後脳の一部である橋という部位をへて延髓につづき,その下は脊髓に連つている.小脳は橋と共に後脳に属する部分である.人間の脳で,特によく発達しているところは終脳に属する大脳皮質であつて,この部分は脳の表面にあるからそれだけでも面積は広いが,更に表面が複雜な皺になつているためにそみ占める面積はずつと広くなつでいる.そこでこの大脳皮質は人間の脳を特徴づける部位であるからここでは大脳皮質の仂きについて述べよう.
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