発行日 1953年5月15日
Published Date 1953/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907291
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
生體は一まとまりになつて働いているが,そのためには,神經系のほかに,體液による調整が行われているのである。この體液による調整は,内分泌腺から分泌されるホルモンが主なものであるが,そのほかにもある。たとえば,炭酸ガス,乳酸などは,組織が働くときの代謝産物として出てくるものであるが,これらは血液によつて循環した,血管運動中枢,呼吸中枢などに作用して,これを興奮させ,それらの物質の排泄をうながすものである。しかし,このようなものは特定の器官から出されるのでないので,いわゆるホルモンと区別して,副ホルモンとよんでいる。この副ホルモン的な作用は,體のなかの到るところで行われ,組織の働きを調整している。たとえば,組織が活動すると,代謝産物がたまつて,その部分の組織液の酸性が高まる。すると,その部分の毛細血管がひらいて,血液の供給をよくして,代謝産物を洗い流がすことになる。また,組織が傷をうけると,そこからロイコタキシンという物質が分泌され,そこへ向つて白血球が集まつてきて,有毒物を食う。また,新しい研究によると,神經が刺激されるときには,神經の末端部から,特殊の物質(アセチルコリンやアドレナリン様物質)が分泌され,これによつて,神經の先に付いている筋腺が活動させられるという。
内分泌腺の働きは,昔からその缺損症状—それを切り取つてしまつたり,それが働かなくなつたためにおこる症状—が知られていた。
Copyright © 1953, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.