貴方の手紙に答えて
若い働き人に
pp.9
発行日 1954年1月10日
Published Date 1954/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200661
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あなたが自分ひとりで世界中の不幸を背負つて立つているように思つていられることを知りお話をしたくなりました.
学窓を巣立つたものゝはりと希望がみんなみんなくだかれてしまつたと仰言るあなたのお気持は,一つ一つ胸に痛い程よくわかります.私共の生活しているこの社会は,誰もが自分の考えている通りに,思うがままに動いているものでないことはお解りになるでしよう.でも,保健婦事業が,こんなに必要であるのにそれがはつきりとみえているのに,尚そのことに対して理解も,同情も,協力もない,その矛盾をあなたはなげいておられるのですね.でも,こういうことをお考えになりませんか? 保健婦事業がこんなにも必要であるという,その切迫した気持を強く感じているのは,そのことについて專門的な眼のある人,見透しのきいている人だけではないでしようか? 言葉をかえてみれば,あなたの村でそのことを最も強く意識しているのはあなた自身であるということ,そして,他の人達はあなたが思う程,よくわかつていないのではないでしようか.其の重要性や必要性は,観念的には理解できても,もつと身近な問題として具体的に経験のしかたが充分でないからではないでしようか? あなたの標準で,やつたり考えたりすることが,村の人達に同じ意味と同じ了解を得られているでしようか.
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