講座
結核の感染と発病
千葉 保之
1
1東鉄病院理学的診療科
pp.10-13
発行日 1952年12月10日
Published Date 1952/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200412
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感染の頻度
日本では結核が余りにも多過ぎる。死亡こそ半減してるが患者は140万を下らないだろう。従つて50人に1人,10世帶に1人の患者の割合は,まだ依然として減つてないし,近く減りそうにもない。それにベットが1割にも足りないので,大部分は自宅療養か或は生活のために働いている。だから伝染源は至るところ存在するといつても宜い。そのうえ結核菌は生物の体外でも数カ月以上,生存を続けることができる。そうすると,結核菌の皆無の環境というようなものは,都会などでは望めないわけである。それ故,当然,都会の人はまず全部感染を受けていても不思議はないわけである。ところが,東京,大阪のようなところでさえ,小学校を出る頃までに,ツ反感陽性率は,せいぜい50%前後である。30才頃になつて,やつと100%近くといつた実状である。だから,結核の感染というものは,そう簡單にはおこらないものだということがわかる。事実,うつりがたいという事例は日常よく見受けられる。あるトンネル長屋で疊1枚に2人以上の割合で雑居しているところを調べた成績がある(新井)。そこに患者が1人いると同じ部屋にね起きしている者は全部ツ反應陽性に出る。ところが障子1枚隣りにはツ反應陰性の者がいる。それも最近来たのでなく,何年も前から住んでいるというのである。また,当所で調べた夫婦結核の問題でもそうである。
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