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茶色のユニフオーム—ニユージランドの保健婦
金子 光
1
1厚生省看護課
pp.21-23
発行日 1952年7月10日
Published Date 1952/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200315
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地平線の彼方,どこまでつづいているのかと思われる真直ぐな白いハイウエイ,遠く起伏する山や丘陵を背に,緑の牧場はてんてんと白く羊の群を織り出して青空の下にひろがり,目近の道端には一画に純白なディジーが咲き乱れている田舍道を,40哩程のスピードでとばす保健婦の車に同乗して目的地につくまで目と耳と口を忙しく働かせる私。テ・アワムツの町からもう10哩は優に来ている。此処らあたりはマオリー部落ときかされるけれど,人の住む家らしいものの姿だにみず,目に入るものは羊と牛の群,これをとりまく美しい自然の風物のみ。ニユージーランド郊外の特徴です。担当区域はテ・アワムツ町を中心に20哩四方位の広大な区域だが,指導の対象となる人口は9つの小学校(分教場式のものが多い)の学童を含む200名余というのだから思わずエツ!ととんきような声をあげかけたのも無理からぬことでしよう。つたない英語のまま間違いかと,もう一度きき直した位,併し考えてみれば,ニージランド第一の大都会オークランドの人口が,約3万,首都ウエリントンは2万弱,全人口200万を切れることを思えば,決して不思議はないのです。日本全土とほぼ同じ広さのこの国に,東京都の三分の一の人口を而も都会に重点をおいてばらまくのですから大ていは想像もおつきになることでしよう。
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