講座
保健婦と集團衞生教育
野津 謙
pp.31-34
発行日 1951年10月10日
Published Date 1951/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200158
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保健所と衞生教育
家庭訪問を專門とする私立の保健婦團體を持たない我が國では,保健婦の職場は,工場,事業場,國保を除いては,殆んど大部分が保健所であろう。全國700有餘の保健所は,過去5,6カ年のに間次第に整備せられ,政府の末端機構として,保健衞生に關して,民衆の監督,指導,奉仕に當つて來たのであるが,其中にあつて保健婦の努力が最大の効果を擧げていることは衆目の見る所である。然し乍ら,保健所の仕事が,厚生省の各局課より都道府縣を經て,市町村から流されるものを,機械的にやつてのけるだけでは,その各々の仕事に血が通つて來ない。近代の大企業が人間を機械の部分品と化してしまつた樣に,保健所の仕事も,所謂お役所仕事となつてしまう。すると保健所は,生活費を得るためのみの職場となつて,仕事に對する熱意はなくなり,保健所の忙しいクリニツクに悲鳴をあげ,結核患者の悲慘な家庭訪問に何等の關心も持たなくなる。毎日の仕事に情熱を持たない人々の集團である保健所は,既に生ける屍である。保健所を,仕事に情熱を持つた人々の集團にすることが衞生教育として先ず第一に考えられなければならないことではあるまいか? つまり保健所が集團として,衞生教育者の資格を持つわけである。
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