発行日 1953年3月15日
Published Date 1953/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907258
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こうした命題について考える事の必要性
人間と社會環境とは互に働きあつて變化しあつていると言う辯證法的社會人格形成論と名付ける學説がありますが,是は私達は結局社會の一員として社會からも心理的に影響を受けると同時に又社會にも影響を與えるのだと言う事を論じているのです。誰でも幼少な時からの色々な事に依つて精神の状態が作られて行くと共に又現在自分の周圍をとりまく色々な社會的な事柄に依つてもそれが變化して行くもので之は避ける事が出來ません。そうすると自分獨りだけの氣持も極めて大切ですが,又他の人や社會生活の事によつて自分の氣持を適宜に變える事が必要となります。從つて單なる個人と言う問題ばかりではなくして,モレノと言う學者が定義づけた集合的統一體としての集團だとか,或は又ラガシュが言う所の具體性をもつた制限的結合としての集園だとか,とも角戰後アメリカで盛んに研究される樣になつた集團の心理と言う課題は病人の場合に於ても大變重要な問題となります。療養をする時には靜かに獨りの病室で安靜にしている事が出來れば望ましいのですが,現在の我國では色々な都合で數人の病人が一つの病室で共同で治療を受ける日を送らねばならない現状です。從つて例えば個室に居る病人の氣持と,所謂大部屋と呼ばれる共同病室に居る病人の氣持との差異について眞劍に考えてみる事は看護學上からしても極めて重要な問題です。
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