時評
性病の衞生教育
小原 菊夫
1
1東京都衞生局豫防課性病係
pp.123
発行日 1951年9月15日
Published Date 1951/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200915
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衞生教育は僅か數年の間に目ざましい進歩をとげた。それぞれの專門家によつて衞生教育を行うための組織や機構の問題,技術や評價の問題などについても研究され,いろいろの形で,講習會なども開かれたし,保健所の衞生教育係も一應は整備された。また,最近ではアメリカの衞生教育の情況を視察して歸つた專門家たちが,その見聞して來たことを參考にして,これをさらに検討し,この事業を推進せしめようとしている。衞生教育は一應軌道にのつた形である。
しかし,衞生教育は何といつても新しい仕事なので,やむを得ないことではあるが,まだすべてが公式主義的であり,形式的であつて,しつかり足が地についていないような感がする。たとえば衞生教育の組織の問題や技術についてはいろいうと研究され,討論されているが,内容については性病の問題にしても,一體何を民衆の中へ持ちこむべきか,などという問題は一向に取り上げられていない。「問題は身近なことから始めよ。」とか「相手によつて問題,方法をえらべ。」とか,いろいろと形式,方法は指示してあるが,肝心な内容は重心がぼやけて,案外お租末だつたりしているしかし,この内容についてのことは衞生教育の專門家が取り上げる問題ではなく,各部門の專門家が自ら研究すべきことかも知れない。それに就ても,これは衞生教育の専門家と各部門の專門家との間で研究,討論さるべき重要課題の一つではないだろうか。
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