ルポルタージュ
國立公衆衞生院衛生看護學部訪問記
鹿島 健作
pp.22-30
発行日 1951年10月10日
Published Date 1951/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200157
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國立公衆衞生院に着いたのは,かれこれ正午ちかい刻限であつた。が,大きな建物のなかはひつそりと沈み込んでいて,人の氣配がほとんどなかつた。玄關の片隅に腰を下ろし,呆んやりした眼差しで自分達を眺めている受付のお爺さんの表情が彫像のような硬さに包まれていた。吸い込まれて行くような底ぶかい靜けさである。自分は思わず靴底の鋲が氣になつていた。
「まだ授業中なんですわ」と,同行のIさんが云つた。そして,彼女もまた幾分靴音を氣にしているような歩きかたになつていた。
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