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結核症發病の病理によせて
岩崎 龍郞
1
1結核豫防會結核研究所
pp.20-24
発行日 1951年9月10日
Published Date 1951/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200138
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結核症の發病に關する病理學説の歴史をふりかえつて見るとなかなか面白い。結核症が傅染病だと云う考えはギリシヤの昔からあつたことで,中世紀には結核患者を法律で隔離しようというくわだてさえもあつた。併し結核症が傳染病だという科學的證明は19世紀の中頃フランスのVilleminによつてはじめて行われ,その後Kochの結核菌の發見で確定した。結核菌によつて起る傅染病ではあるけれども,結核菌が體内に入ることによつてすぐ結核症になる樣な簡單なものでないことは結核菌發見當初からわかつていた。感染の危險のある結核患者は澤山おるのにそのまわりの人々で結核症に罹る人は必ずしもそんなに多くないことからそう考えていたのである。結核の感染と發病とは分離して考えねばいけないということは病理解剖學者の手によつて明かにされた。Kuess,Ghon,Ranke等の學者が結核菌がはじめて體内に入り,その場所に出來る病巣即ち初感原發巣と,これと對をなして生する淋巴腺の病巣を認め,この2つを初期變化群と命名した。これが出來ればツベルクリン反應は陽性になる。ツベルクリン反應を初めたのは1907年Pirquetであるが,翌年Mantouxが現在行われている樣な皮内注射法で反應を見ることをはじめた。ツベルクリン反應は感染を知る最も確率の高い方法であることは周知のことであるが,これは一つの生物學的反應である。
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