--------------------
結核のアフターケアー
植村 敏彦
1
1國立東京療養所醫務課
pp.13-17
発行日 1951年9月10日
Published Date 1951/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200136
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
アフターケアーの必要なる理由
肺結核は,つい最近迄不治の病と云われ,結核と診斷される事は,死の宣告を受けたも同然と考えられて居た事は周知の如くであります。これは,第1に肺結核が或程度以上進行すると,これを喰とめる確實な方法がなかつた事が大きな原因でしたが,レントゲン寫眞の發明に依り比較的早く發見出來るようになつたので,直ぐ安静を守れば,一應進行を止める事が出來る場合が多くなつてまいりました。殊に,ストレプトマイシン等の化學療法の進歩に依り,最近は殆ど總ての結核を數日の内にぴたりと押える事が出來るようになつたのは,誠に偉大な進歩と云わねばなりません。處が,肺結核に於ては,「進行が止る事」と,「治癒」とは別ものでして,多くの場合この先に「室洞の閉鎖」と云う第2の大きな山があるのです。この室洞は,開いて居る限り結核菌の源として止り,永久に再發や進展の原因となるのです。室洞と申しましても,丸い空白の影のみをお考えになる方があるかも知れませんが,實際は蜂の巣の樣な小さな室洞が集合して居る場合が多く,肺結核は結核菌が出る限り大なり小なり必ず室洞があると考えた方が間違いがないのです。唯小さなもので,數が多くなければ,安靜だけでも閉じる事がありますが,くるみ大以上の空洞は,安靜や化學療法だけでは先ず絶對に閉じないと云われて居ます。
Copyright © 1951, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.