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はじめに
2003年7月,「心神喪失等の状態で重大な犯罪行為を行った者に対する医療及び観察等に関する法律(以下,医療観察法と略す)」が国会において成立し,2年以内に施行されることとなった。医療観察法が施行されると,「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下,精神保健福祉法と略す)」による措置入院制度は大きな変更を伴う。現在の措置入院の対象から医療観察法が対象と定めている者が除外され,精神保健福祉法が対象とする措置入院患者は重大な犯罪行為以外の他害行為と自傷行為に限定される。他害行為が限定されることにより他害行為が減少するが,自傷行為は変化がないために,結果としては自傷行為のほうに重みが大きくなる。また,措置入院制度が精神科救急の中で今まで以上に重要な役割を果たすようになると考えられる。
医療観察法の成立はもう一つ重要な問題を提起した。医療観察法は対象者の社会復帰を前提とした入院医療を行うとともに,退院となった対象者あるいは通院処遇となった対象者には指定通院医療機関が医療を担う一方,社会復帰調整官が中心となり社会生活を支援する体制がとられることを定めている。現在検討中であるが,指定入院医療機関に入院となった対象者には入院中から退院後に向けた社会復帰対策が入院機関の職員だけでなく社会復帰調整官をはじめとする地域の生活支援に携わる組織も含めた計画が練られることになると考えられる。他方,従来の措置入院制度ではその対象者に限った社会復帰対策を講じていないばかりでなく,1995(平成7)年の精神保健福祉法改定で措置解除後の保健婦による訪問指導に関する規定が削除されてしまっている。これは特に問題を抱える措置入院患者の円滑な社会復帰と再発防止策にとっては大変問題が多いことを示していると考える。
筆者らは2001年からの3年間,2001(平成13)年度厚生科学研究費補助金厚生科学特別研究事業「措置入院制度のあり方に関する研究(主任研究者 竹島正)」および2002(平成14)年度,および2003(平成15)年度厚生労働科学研究費補助金障害保健福祉総合研究事業「措置入院制度の適正な運用に関する研究(主任研究者 浦田重治郎)」において,2000年度の措置入院にかかわる行政資料に基づいた研究を行ってきている。その中の「措置入院者の症状消退届」を解析した結果に基づいて,措置解除の実態と問題点,措置解除後のアフターケアの実態,措置入院患者および重症精神障害者の退院後のケアについて検討してみた。
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