附録・写真でみる看護技術・32
肺結核のアフターケアー
植村 敏彦
1,2
1国立東京療養所医務課
2東京都保護指導所薫風園
pp.241-256
発行日 1956年10月15日
Published Date 1956/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910226
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肺結核は非常に再発の多い病気で,以前に「不治の病」とさえいわれた理由の中には,この事が大きな役割を果していた。即ち,一見完全に治癒したかの如く見えても,数年以内に再発する者が大部分であつたので,これは「不治」であると考えられた訳である。
しかし,現在の進んだ医学から見れば,このことは,結局当時の診断方法が極めて幼稚であつた為,充分治癒していないものを,「治癒した」と判断していた為に他ならない。最近の化学療法,外科療法の長足の進歩により,徹底した治癒状態にまで治すことが出来るようになり,又レントゲンの進歩,培養法の発達等により,治癒程度に就ての診断方法も,以前に比べれば段違いに正確になつた。しかしながら,それでも猶現在,或る恢復者に向つて「貴君は自分の職場に戻つても決して再発する危険がない」とか「貴君を再発させない為にはこの程度の仕事に従事していればよい」とはつきりいい切れる程には結核の医学は進歩していないのである。しかし,現実の恢復者にとつては,この事が最も重大な問題で,幾ら治つたといわれても,無事に働ける保証がなくては,社会生活に戻るのが不安な訳である。
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