講座
衞生學の定義と分類
須永 正
1
1大宮保健所
pp.27-29
発行日 1951年6月10日
Published Date 1951/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200094
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1.衞生學の進展
衞生とは支那の莊子庚桑楚篇にはじめて使用された言葉であり,その意味は喧嘩をしないことだという。降つて我が國においては明治8年内務省がはじめてこの語を探用したがその意味は主に清潔すなわち傳染病に罹らないように住居などを清潔にする程度の内容しかもたなかつた。當時獨乙流學を受けついだ,我が醫育機關も衞生學教室を設置したがこれはほんのつけたりで校庭の片隅に僅かに命脈を保つていたに過ぎない。然るに文明の進むに隨い,次第に内容が進展し,近來は衞生とは單に傳染病に罹らないようにするばかりではなく,我々の生活を樂しく,安全かつ能率的にする一切の行動が含まれるにいたつた。健康ということについても同樣,從來は單に肉體的に病氣でない状態の意味に用いられていたが,1946年WHOは宜言を發し,單に肉體的に病氣でないばかりでなく,さらに精神的にも社會的にも良好な状態を伴つて,はじめて保健という定義するに至つた。けだし社會的に良好な状態を伴わない肉體のみの健康は,極めて不安定な健康であり,いつ崩れるかも知れないからである。此の如き良好な状態(成は環境)は又優境とも稱せられる。換言すれば我々は優境は居住することによりはじめて眞の健康が享受せられるのである。
かく精神的肉體的能率の増進をはかり,社會的に安定を得しむる一切の行動を余は保健福祉の語を以つて表わさんとするのである。
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