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愛の流れはわが胸から
北畠 八穗
pp.9-11
発行日 1951年6月10日
Published Date 1951/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200090
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保健婦さんを見たのは,二度きりしか無い。一度は,疎開先,山形と仙臺の峠の村で,大掃除の檢査に來た保健婦さんだ。メイセン花模樣のモンペの上下をキリツと着こなして,薄化粧も上手に,惜しいのは「お掃除しましたか」
きめつけてきいたことだ。姿つきから,まれにみたかしこい人に違いないと,みとれていた矢先なので,この心のこもらない言葉は,いつそう私を,殘念がらせた。何百軒もの檢査をして,つかれていたのかも知れない。また,疎開者に口をきくので,かたくなつた故もあるかも知れない。ただ,保健婦さんというお仕事と,聰明な姿から,私は,疎開先の心細さも手傳つて,なおのこと,愛たつぷりな言葉を,待ちすぎた樣だ。
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