特別論考
健康観の変遷と現代における健康
丸岡 隆二
1,2
1大阪府立白菊高等学校
2大阪府立看護短期大学
pp.370-378
発行日 1988年4月1日
Published Date 1988/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661923128
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疾病観と健康観とのかかわり
デュボア・レイモンの説に代表される従来の両極的健康観・疾病観
デュボア・レイモン(Du Bois Reymond 1819-1896.フランス人.哲学者,医学者,ベルリン大学教授)が,その友人と健康問題について取り交わした中で,「健康とは病気でない状態,病気とは健康でない状態」と説いているが,この考え方は古来よりごく最近まで世界を支配しており,現代社会でもこの思想が多分に尾を引いているようである.文献をひもといてみても,古代ギリシャの昔から健康に関する具体的な定義を発見する事は難しい.例えば,古代ギリシャの格言として伝えられている『健全な精神は健全な肉体に宿る』との言葉は,健康観というようなものでなく,神に捧げる祈り,願いであったとも言われている(京都大学名誉教授,川畑愛義氏の説).
したがって健康観の史的変遷を探究しようと思えば,この病気と健康とを両極的存在とする思想を足場に,健康の反対極である病気の定義,すなわち疾病観の史的変遷を考察する事により,その反対極の健康観の史的推移を理解することができる.
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