特集 医療と人権
医療における患者人権観の変遷
中川 米造
1
1大阪大学
pp.20-24
発行日 1971年1月1日
Published Date 1971/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661915874
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言葉のうえでの人権
ものごとというものは,多くの場合,まず事実があって言葉が生まれるが,権利に関することは,言葉がまずつくられ,それを社会的に承認しなければ始まらない。人権については,ふつうフランス革命における「人間および市民の権利の宣言」(1789)から言葉が始まったことになっている。これは自由・平等・所有・抵抗などの権利を,人間の生まれながらの権利として承認しようということで,内容的には専制政治を廃止させようというものであった。
このなかには別に患者の人権は全然ふくまれていない。病人の権利保障が法的に考慮されはじめたのは第一次大戦後で,ソビエト憲法にはじめて,それが明記されたときであろう。世界的には1946年7月22日,61か国の代表によって採択された「国際保健憲章」がある。これは,ふつう健康の定義の部分がよく引用されるが,権利の部分は意識的かどうかはわからないが,ぬかれていることが多い。全文におめにかかることが少ないと思われるので,多少繁雑かもしれないが,とくに掲げておく。
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