特集 医療倫理を学ぶ―21世紀における看護者の教育
第4部 医療をとりまく社会の変化
医療観の変遷―バイオエシックスの視点から
大林 雅之
1
1山口大学医学部医療環境学
pp.969-972
発行日 2000年11月30日
Published Date 2000/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902396
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
医療観とは何か
今日,医療にはあらゆる方向からの視線が注がれている.たび重なる医療事故の報道,臓器移植や出生前診断などの先端医療技術の受容,そして,高齢社会を迎えての医療・福祉の制度などの問題を通した人々の視線である.そこでの「医療観」はさまざまな見え方で現われることになる.
従来,「医療観」の議論といえば,それは,医療の正しい姿を示すことを意図し,暗黙に,論者と読者が共有している「医療の正しい姿」を改めて提示することであったように思える.つまり,「医療そのものは善である」という「医療性善説」に裏打ちされた「医療の正しい姿」がそこにはあった.しかし,今日では,その示すべき「医療の正しい姿」を論者と読者が共有できる場がもはやなくなってしまったのではないだろうか.つまり,医療をめぐるさまざまな問題点の指摘は,「医療観」というものが論じられる場そのものが大きく揺らぎ変化しているのではないか,ということである.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.