扉
医療不信はどうして起こったか
榊 寿右
1
Toshisuke SAKAI
1
1奈良県立医科大学
pp.1199-1200
発行日 2004年12月1日
Published Date 2004/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100511
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今日ほど医療不信がやかましく言われている時代はない.どうしてこのようになってしまったのか.しかしよく考えてみると,“不信”はなにも医療に限ったことではない.これは世の中に広く蔓延してしまっている“自己中心人間の増加”によって引き起こされた重大な社会問題の中の1つにすぎないなのだ.
数カ月前,NHKスペシャルで医療不信の問題を取り上げていた.そして,NHKのアナウンサーが“なぜ今日,こんなに医療不信になってしまったのか”と繰り返し声をあげていた.修練の不足を言う声もあったが,“誰もがやってはいけないと当然わかっているミスを平然と起こしていることに不信の原因がある”というのが本当の所であろう.しかしその番組に出席していた人たちの中から誰一人,現在の日本に存在するもっと根深い,日本人が忘れ去ってきた根幹的な問題,つまり“やってはならないミスを起こして平然としていられる精神構造への変化”にこそ問題があることを話題にする人はいなかった.
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