天地人
不信のとき
地
pp.1241
発行日 1978年8月10日
Published Date 1978/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402208009
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息子が,こんな広告が本当にあるのかといって,パロディ調を売りものにしているある雑誌の記事を見せてくれた.最近ビックリした出来事という投書欄に"お医者さんのための本の広告で「患者を目の前にして,直ぐ役に立つ本.好評!」だって.しばらく考えたけど,やっぱりすごーく恐ろしい!!(18歳,女性)"とある.そこには新聞でもよくみかける,N書店の広告そのものも掲載されていた.これは医師への不信感を若者らしく,巧みに滑稽化したもので,何となく参ったと感じた.
石川達三氏が週刊S誌に連載しているエッセイにも近代医学への痛烈な批判がある.今の医師は検査ばかりして,"その数字だけを見て診断を下す.彼は私の脈にさわりもしない.聴診器で心音を聞きもしない.つまり生きている私を診察しているのではなくて,提出された数字を診察しているのだ."人間ドックで,検査の資料をコンピューターで分析し,精密きわまる診断をするというのは"医学の邪道ではないかと私は思った。医学よ,奢る勿れ.人間というものについて,もっと謙虚であってほしいのだ.""医者は事あれかしで,患者のからだから変なものを見つけ出せば凱歌をあげるらしい。""一体近代医学とは何であるのか.何かしら大きく間違っているのではないだろうか"とまことに手厳しい.
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