特集1 “食べる行為”への援助
食べる行為と看護のかかわりを考える—意識障害患者の長期にわたる嚥下困難への援助を通して
皆美 妙子
1
1岡山大学医学部付属病院脳外科病棟
pp.397-400
発行日 1981年4月1日
Published Date 1981/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922759
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食べるという行為は人間にとって最も基本的な欲求のひとつであり,また治療・看護の上からも,栄養学的に不可欠であることはだれしも認めるだろう.病院生活を送る患者にとっては,この食べるという行為は様々の原因で障害されている.看護側もともすれば食事を栄養面から重視するあまり,食事摂取量の方に関心が向き,人間性とのかかわりにおいての食べる行為という面を忘れがちになっているのではないだろうか.‘どのくらい’食べたかだけでなく,患者が療養生活の一場面として‘どのように’食べているかにもっと注目してよいと思う.特に脳外科領域の疾患においては,意識障害患者にみられるように,人間の基本的欲求そのものが障害されている場合は,経管栄養による食事となる.栄養を補給するという点では問題はないにしても,レビンチューブを挿入されて横たわっている患者の姿からは,本来の人間的欲求としての食事のもつイメージからは遠く,逆に患者の人間性を疎外するものとしての感じすらうけるのである.
ここに紹介する事例は,意識障害があり,嚥下困難のため経口的食事摂取が自立できない患者への,7か月にわたる援助過程である.いくつかの失敗や後退を経験し,試行錯誤しながらも,この援助過程を通して,食べるという行為がいかにその人の人間としての存在を強く主張するものであるかを学んだ.
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