特集1 “食べる行為”への援助
生きることは食べることから始まる—‘食べる’ことへのかかわりにより闘病意欲が生じた舌腫瘍患者の看護過程
加藤 緑
1
,
高橋 郁子
1
,
島田 紘子
1
,
小沼 早苗
1
1北海道大学医学部付属病院放射線科病棟看護管理室
pp.392-396
発行日 1981年4月1日
Published Date 1981/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922758
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はじめに
人にとって‘食べる’ということは,健康であればごく当たり前に行われており,単に栄養確保のためのみの行為ではなく,人間本来の欲求を満たすものでもあり,‘生きる’ということに最も密着した行為であると考える.しかし,ひとたび健康を害した人にとっては,‘食べる’ことは楽しみから苦痛に変わる場合が多く,看護者のかかわりでそれが大きく左右されることは周知のことである.
放射線治療を受ける患者の多くはその副作用で食欲を落とし,原疾患の消耗に併せて体力の低下は著しい場合が多い.特に頭・頸部腫瘍患者は,放射線治療によって口腔内に粘膜炎を起こし,疼痛や咀嚼・嚥下障害等で経口摂取が困難になったり,全く不可能な状況におかれてしまう.経管流動物による栄養確保は手段としてやむを得ないが,口から食べられないという現実に直面した患者の精神的なショックと苦痛は大きいものがある.
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