連載 高齢化社会の福祉と医療を考える・23
職業としての老人ケア[1]
木下 康仁
1,2
1立教大学社会学部
2日本老人福祉財団
pp.712-715
発行日 1988年7月1日
Published Date 1988/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922042
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■“正論”のおかしさ
以前,テレビのある対談番組で著名な人が老人問題について病老人福祉は人によって決まります.心です.だから職員を教育しなくてはなりません」という主旨の発言をしていた.この種の発言は別に目新しくはないし,むしろマス・メディアや書物などを通してしばしば聞かされているので,今では陳腐な感じさえするようになった.私達は職業として老人のケアに従事することの意味を考えるのだが,この点について現状を理解する上でこの発言がきっかけを提供してくれる.
この発言内容が間違っているとは思えないのだが,対談を聞いていてどこかおかしいという気がしたのである.テレビを見ていた人々は確かにその通りだと思ったであろう.こうした見解はすでに社会常識になっているから,関心ある人々には何度聞いても耳に快くひびく.そして,関心のない人々は疑問を感じることもなく,そんなものだと思いつつ聞き流すのだろう.
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