連載 高齢化社会の福祉と医療を考える・18
老人ケアの“しんどさ”を分析すれば
木下 康仁
1
1立教大学社会学部
pp.194-197
発行日 1988年2月1日
Published Date 1988/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921927
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人手不足だけが原因ではない老人ケアの“しんどさ”
家庭においてであれ医療・福祉施設であれ,自立した生活が困難になった老人のケアが大変であることは,実際にケアを担っている人々は言うに及ばず,社会一般も等しく認めるところである.確かにこうした老人には手がかかるし,ケア従事者は心身共に消耗しやすい.しかし,ケアの大変さの中身については必ずしも十分に理解されていないのではないだろうか.
例えば,一般の人々は具体的なケア内容についてはあまり知識がないから,ケア従事者の身体的疲労や片時も目を離せない場合などの心理的負担をこの中身と考えがちである.ケアを量的な問題と理解し,この意味で老人のケアは大変であると理解する.そして,この問題が解決されれば「福祉の心」にあふれたケアが可能になるだろうと考える.老人ケアの問題は現在このような論調で語られている.
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