連載 高齢化社会の福祉と医療を考える・15
老人と“絶対的自己正当性”
木下 康仁
1
1立教大学社会学部
pp.1120-1123
発行日 1987年11月1日
Published Date 1987/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921859
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“絶対的自己正当性”とは
老人のケアに携わっている人々は,老人たちによくみられる傾向として自分の言うことが正しいのだという強い思い込みのあることを経験的に知っている.職員がそんなはずはないといくら説明しても,老人の方は自分の主張が正しいと言ってゆずらない,むろん職員の思い違いで,老人の理解が正しかったと後で判明する場合もあるのだが,ここでは現実的にみる限りとても老人の言うことが正しいとは思えないときについて考えることにする.ただ,今回は論じる余裕がないが,こうした思い込みをする老人に対して職員は先入観を持ちやすく,時として老人の言うことが正しいにもかかわらず,頭から否定する傾向のあることも指摘しておかなくてはならない.
職員がそんなはずはないと必死に説明しても,それをはねつけて自分の主張を押し通そうとする老人は,あたかも自分は絶対に正しいと確信しているようにみえるものである.この傾向を,“絶対的自己正当性”と呼ぶことにしよう.
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