心病む人とともに 精神科病棟での日日・3
自傷行為—痛ましく激しい訴え
三宅 富貴子
1
1東春病院看護部
pp.326-327
発行日 1983年3月1日
Published Date 1983/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919816
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精神科の看護婦は詭弁家?
ある日,脳外科病棟勤務の友人がプリプリしながらやって来た.ある先生が,‘精神科を志すような者は詭弁家ばかりで,まして看護婦は自己満足しているに過ぎない’と言ったというのである.それを聞いた私は,精神科勤務を希望している彼女の怒りにさらに拍車をかけ,2人でカッカした.“詭弁”ということばの意味を再確認しようと辞書まで引っ張り出した.しかし考えてみたら,精神科を理解してくれる八は医療従事者の中でも少ないのかもしれない.精神科は‘変わり者’が行く所,精神科看護は患者の遊び相手だけ—そんなふうに考えている人が多いらしい.人の思いは自由である.無理にわかってもらわなくても,言いたい人には言わせておこう,と今なら開き直ることができる.しかしそのころは,友人も私も若く,経験が浅いゆえに,ある種の使命感に燃えていたのだろう.2人でひとしきり外科を中傷し合うことで怒りを発散させた.
その彼女もそれから1年後,信州の県立病院へ転勤し,ほどなくそこの精神科医と結婚した.やはりよほど精神科が好きだったのだろう.一度子供を連れて遊びに来てくれたこともあるが,近頃ではどうしているのか,音沙汰がない.精神科が好きだという友人の数少ない1人であった.“詭弁”という言葉を聞くと,今でもあのころのことを思い出す.‘看護婦さん,ごまかし言ってるんでしょう?
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