特集 開業医院のなかの看護
開業医院に求められる看護—准看教育の経験をとおして
中島 三枝子
1
1愛知県がんセンター
pp.579-585
発行日 1980年6月1日
Published Date 1980/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918971
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午前の診療時間中の開業医宅に,仕事上の必要から私はよく電話をしました.療診中の医師を待つために置かれた受話器のなかから,赤ん坊の泣き声やしわぶきがもれ聞こえて,患者で混雑している小さな待ち合い室の様子が伝わってくるのです.ある医師宅にかける時,そういったふん囲気とともに,決まって聞こえてくる話し声がありました.これぞ,まさに盗み聞きなのですが…….
それは,いつも窓口にいて診療業務を手伝っている,ここの医院の奥さんの声でした.診療を終えた患者さんに説明をしている様子,風邪らしき人に薬の服用の方法からはじまって,安静の大切さ,保温,発汗時の更衣,食事の内容など,わかりやすくていねいな説明を淡々として,おだいじにと患者を送り出しているのです.看護婦免許を持っていないこの奥さんの,素人の域を出ない程度に心しておられるであろう話の内容に,私は感心したものです.なによりも私の心をとらえたことは,親身に心の底から話しているその話しぶりでした.
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