学生の眼
教師の眼—学生とのかかわりのなかで
荒井 文子
pp.854-856
発行日 1979年8月1日
Published Date 1979/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918747
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私が実習の場でこの佐藤さんとかかわりを持ったのは,今回が初めてであった.佐藤さんの実習の目標は‘看護過程をもう一度見つめ直したい’ということだった.
私との話し合いのなかで,佐藤さんの今までの実習体験のなかで,どこがどのようであったかを確かめていると,佐藤さんは突然‘私ダメなんです.私が言葉を出せば,相手から四角四面の言葉が返ってくるんです’と泣きだしてしまった。それまでの私の眼には,佐藤さんは自分の行為の1つ1つを納得いくまで吟味し,すすめていくタイプで,特に身体的ケアに関しては一流と言えるほど見事に行い,よく気がつくいわゆる“安心のできる学生”として映っていたが,その時の佐藤さんはいつもと違っていた.‘どんなに自分の行為がこれでよいと指導者から言われても,それでも私は緊張するんです.そのことが看護していくうえで患者にどのように影響しているか,自分ではっきりつかみとりたいんです’と訴えているように私には感じられた.
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