学生の眼
患者から学んだこと—援助に拒否的だったL氏とのかかわりを通して
佐藤 時子
1
1国立療養所多磨全生園看護学校
pp.850-854
発行日 1979年8月1日
Published Date 1979/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918746
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
L氏の受け持ちに決まって
‘L氏は佐藤さんに受け持ってもらいます’と看護婦から言われた時,大変な人の受け持ちになったな,できることならほかの人と代わりたいと思った,そう思ったことの1つには,普通は患者の名前の横に受け持ち学生として書かれるはずの私の名前が,L氏の受け持ちだと分からぬよう,ほかの患者の名前の横に書かれていることだった.また,L氏の受け持ちの看護婦の‘私もまだL氏にどう接したらいいかわからないでいるんですよね’という言葉を聞いて,看護婦がL氏に特別な接し方をしているように感じ,私はL氏に何をしたらいいのか,私に看護援助ができるのかと,不安でいっぱいになった.
72歳になるL氏は,ある看護婦に対しては敵対意識をもち,その看護婦を暴力団員に仕立て,‘自分に危害を加えに来る’と毎日画用紙に書き廊下にはりだしていた.また,別の看護婦に対しては好意を示すこともあった.私たち学生が実習を始めたことについても,暴力団員として手伝いに来たと,実習に行ったその日に既に書いてあった.そんなことから,私が受け持ちであることを伝えないほうが,L氏にとって精神の安定をはかれるのではないかという配慮によって,私は部屋全体を受け持つ実習生として接することになった.
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.