ホームヘルパー跳びある記・11
究極なるものへの関心
松田 万知代
1
1藤沢市役所‘老人いきがい課’
pp.325
発行日 1979年3月1日
Published Date 1979/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918639
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毎年のように柿の実が色づき紅葉の季節になると,ヘルパーの仕事が増える.老人たちの訃報が次々と入り,対象ケースが減ると,申し合わせたように新しいケースが増える.有病老人にとって,気圧の変化や気温の差に起因して急激な変化があるようで,特に寒さに弱い.入浴が何より楽しみだったAさん,Bさん,わがままでヘルパーを困らせたCさん…….今年は例年になく死亡する老人が多い.
10年近くも寝たきりで,ひっそりと団地住いで洗濯機にも踏み台のいる小ちゃな妻に看護されていたHさんも,看護に疲れた妻がつい居眠りをしていた間に息を引き取つたと連絡があった.Hさんの訪問から帰ってきたヘルパーが,その日がNさんの初七日であることを思い出すと,この形の上ではよく似ているけれども,内実は相反する2つのケースの話題で,ヘルパーの控え室はひとしきり騒然となる.Hさんの場合は残された老妻へのいたわりと同情が集まり,これからどう励まし援助していくかが話し合われるが,Nさんの場合は,残された老妻へのいたわりも同情もなく,いかにひどいケースであったかの話題でもちきりとなる.
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