今月の言葉
母性保護への再関心を
S
pp.5
発行日 1957年8月1日
Published Date 1957/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201311
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今年は,昭和17年,妊産婦手帳の制度ができてから15年目,昭和22年に児童福祉法ができ母子手帳と名を変えてから丁度10年目に当る.十年一昔といえば,既に手帳制ができてから一昔半という勘定になる.今では母子手帳といえばまず知らない人もない位に有名になつたが,これができた頃には全くの新生児として,この世にあらわれたのであり,いろいろの曲折はへても,とも角今日の状態に立到つたのは喜ぶべきことといわねばならない.
この手帳には色々の意味があるが,産科的の最も重要な意味は,この手帳が「妊婦の診察」の習慣を養成し,且つ妊婦が自分で「病暦を持廻る」ことにあると思う.いまでも,妊娠の後期迄受診しない人も多数あるにはあるが,しかし,全般的にみて,この習慣の養成に貢献したことは確であろう.妊娠中毒症の重いものは,昔にくらべて随分減つたそうであるし,又先天梅毒のパーセントも著減した.この原因をすべてこの手帳に帰することもできないであろうが,手帳がその大きい原動力になつていることは認めてよかろう.
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