特集 痛みつづける患者への援助
希望のない痛みを前にして
平田 文子
1
1日本三育学院カレッジ看護学科
pp.602-606
発行日 1978年6月1日
Published Date 1978/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918414
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Fさんの入院
日ごろあまり病院に縁のなかったFさん(66歳,主婦)は,食欲不振,体力の低下に気づき,昨年1月他院受診し,胃癌と診断された.即刻手術を勧められたが,家族の同意がなく本人も気がすすまず,入院後もっぱら西式療法を続けてきた.しかし,数か月間の治療効果が期待できないため,当院における内科的治療に最後の望みをかけて,昨年10月5日に入院してきた.入院1週間前より,極度の食欲不振,胃部不快感,空腹時の胃痛があった.これらの苦痛は,Fさんを心身ともに疲労困ぱいさせた.
長男に付き添われて入院してきたFさんには,笑顔が見られず,かなりの貧血を思わせる顔色であった.間もなく,諸検査の結果,幽門部の末期癌であることが判明した.
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