特集 死の臨床—死にゆく人々へのアプローチ
死のチームワーク
柏木 哲夫
1
1淀川キリスト教病院精神神経科
pp.173-184
発行日 1974年2月1日
Published Date 1974/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916944
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
今日もまたひとりの胃癌患者が死にました.目を真っ赤にした家族が病室の前にぼう然と立っています.医師や看護婦は,やがて行われる剖検の準備に忙しく動き回っています.解剖台の上の死体の胸部から腹部にかけて切開が入れられ,各臓器が取り出されます.昨日まで疼痛を訴え,死の不安におびえていた患者が,今は1個の肉塊と化してしまったのです.死というもののはかなさを感じる一瞬です.
しかし,忙しいスケジュールに追われている私たちには,ひとりの患者の死を十分にかみしめる余裕がありません.死に目をそむけるように私たちはそれぞれの仕事の中に埋没します.しかし看護者にとって患者の死はどうしても避けて通ることのできないものです。好むと好まざるとにかかわらず,どうしても直面せざるを得ない事です.‘死の看護’の問題は,常に古くかつ新しい問題なのです.
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.