視・聴・画
〈ヤクザ映画〉の転換,他
松田 政男
1
1「映画批評」
pp.124-125
発行日 1971年5月1日
Published Date 1971/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916041
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どなたでも,一度か二度なら,土曜日のオールナイトの映画館で東映ヤクザ映画をご覧になったことがあると思う。日本映画斜陽説を吹き飛ばすほどの大入りに,若い熱気が立ちこもり,画面に鶴田浩二や高倉健や藤純子が登場するとイギナーシの声援がかかり,悪役専門の天津敏や遠藤辰雄らが出てくるとナーンセンスの罵声がとぶ,といった光景も,今ではすっかりおなじみとなってしまった。
こんなところから,ヤクザ映画といわゆる“新左翼”系学生たちの結びつきが云々され,最近でも,米誌『ニューズウィーク』が,「大学紛争のバリケードの中に,街かどのデモの中で,エネルギーを燃やし,あばれまわった目本の学生たちは,いま,どこへ行ったのか」と自問し,「彼らは映画館の中でヤクザ映画を見ているのだ」と自答するという,それこそナンセンスなできごとが起きたりもした。
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