Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「ちはやふる 上の句」,「ヤクザと憲法」—発達障害者をドラマチックな存在として描く
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.645
発行日 2016年7月10日
Published Date 2016/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200665
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筆者の職業柄,ギャンブル,薬物,不倫,暴言などで物議を醸している有名人を見ていると,自身の発達障害的な性質を自覚していれば,こんな酷い結末にならなかったのではないかとつい想像してしまう.並外れた才能を有している場合,周囲および本人は,ひとまず発達障害的性質を疑い,そこに宿るリスクと対策を検討しておくべきだ.発達障害者は,雲の上から一気に奈落の底に落ちてしまうこともあれば,その逆もあるドラマチックな存在ゆえ,幾多の映画の主人公や,本稿で取り上げるような脇の人物として光を放つ.
「ちはやふる 上の句」(監督/小泉徳宏)は,競技かるたに打ち込む高校生の群像ドラマ.前半は,競技かるた部創設を仕掛ける綾瀬千早(広瀬すず)が,団体戦に必要な5人の部員確保に奔走するさまを描く.自身を含め4人は確保できたが,あと1人の見通しが立たない.そこで白羽の矢が立ったのは,校内でただ一人どこの部にも属していない駒野勉だ.彼は学年2位の秀才だが,教室でも他者と接することや群れることを嫌い,机上に電車の模型を置き,ひとり鉄道時刻表に見入ることを無上の喜びとしている.「机くん」というあだ名も言い得て妙.自閉症スペクトラム系のキャラクターである.
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