視・聴・画
〈ピンク映画〉の肉体,他
松田 政男
1
1「映画批評」
pp.112-113
発行日 1971年11月1日
Published Date 1971/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916188
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〈ピンク映画〉の肉体,と書いたからと言って,別に,あの薄明のスクリーンの中で妖しくも白く輝く肌を惜し気もなくさらけだし,男どもの熱っぽい視線によってまさにいま姦されつつあるピンク女優たちの魅力について,一席,弁じ立てようとしているわけではない。私は,前号を受けて,若松孝二という異端の映画監督と,彼に率いられる若松プロダクションの60〜70年代の軌跡をばさらに綿密に検討するつもりであった。つまり私は,若松孝二を先頭に意気軒昂たる生者たちの肉体がかもしだす活力の源泉に分け入ろうと思ったのだ。
しかし,人間の運命とは常に残酷なものである。私は歓喜あふれる肉体の生についてではなく,ひとりの若い女性の肉体の死について,さよう,若松プロを支えたかけがえのないひとりの女性の非命について,いま書かなければならないのである。私が本欄をかりて,彼女のために,一篇の鎮魂曲を捧げようとすることを,読者諸姉よ,ぜひお許し願いたい。
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