Hello Nursing・11
私費患者病棟
姉崎 宜子
1,2
1日赤短大
2東洋大学大学院社会学部修士課程
pp.94-96
発行日 1971年2月1日
Published Date 1971/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661915928
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
□二度目の冬□
渡英2年目の春から初秋にかけては,英国の生活にも慣れ,快適な気候のなかで,職場も明るく,年5週間の休暇にも存分に羽根をのばした。
しかしふたたび秋が深まり,英国の空を暗雲がおおい始めるとともに,私の職場にも再び暗い影がさし始めた。10月から新たに,以前とは別のシンガポール出身の若い中国人婦長(シスター)が,私の職場に着任したのである。以前,職場で不人気な中国人婦長のために,同じ東洋人ということで苦い経験をなめたので,中国人婦長にアレルギー気味になり,少し意識しすぎたのかもしれない。それとともに,新たに人工腎室を家庭人工腎患者専用とし,それまであった人工腎センターの開設をひかえて小さな職場に3人の婦長が勤務することになり,しかも誰が主任婦長か明確でなかったことも混乱の原因であった。英国の病院で,紺のユニフォームを着ているシスターというのは,必ずしも日本の婦長と同義ではなく,年功や資格がある程度そろった看護婦に与えられる階級である。したがって,一つの看護単位に2人以上のシスターがいる場合がしばしばある。しかし,通常そのうち1人が主任婦長(senior sister)になる。私の職場ではその主任婦長が誰か明確でなかったのである。先頭馬のいない,しかも毛色のちがった馬が含まれている3頭立ての馬車のようなもので,足並みがそろってうまく進んで行くか心配であった。
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.