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麻疹
栗山 重信
pp.10-13
発行日 1952年4月10日
Published Date 1952/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200258
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殆んど総ての人が麻疹に対する感受性を持つており大多数の人は小兒期に罹り其機会のなかつた極く少数の人が成人となつてから罹る。一度これに罹ると強力な持続性の免疫を得るので生涯再び罹らぬのが常である。しかし時々二度三度麻疹に罹つたという人はいる。麻疹にまぎらわしい発疹性の病気が色々あるのでそれと混同せられるととが多いと思われるが実際の再感染も極く少数にはあると見られている。麻疹は今迄に罹つたことがなければどの年令でも罹るが生後数ヵ月迄の乳兒は比較的罹りにくい。母親は既に麻疹に罹つているので共免疫性を胎兒に与えるからである、従つて母親が麻疹未経過であれば生れる子供も免疫性を持つていない。母親より受けた免疫性は他働免疫で自分が罹つて得た自働免疫とは異なり次第に消失するので生後数ヵ月以後の乳兒は麻疹に罹り易い状態になる。
都会地では毎年麻疹が流行する。冬の終り頃から春にかけて流行することが多くまた一年おきにその流行が大きく現われる傾向がある。交通の不便な所ほど麻疹流行の頻度は少なくなる。ことに離れ島などでは非常に少ない。麻疹流行史上有名なのは1846年に大西洋のファロア群島で65年振りに麻疹が流行し殆んど総ての住民が罹患したことである。昭和14年に伊豆式根島で12年振りに麻疹の流行があり自分の教室から出張して調査した。
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