特集 不足対策への動き
行政の動き
傷口をひろげたビジョン欠乏—看護婦不足と看護行政
前沢 猛
1
1読売新聞社会部
pp.44-48
発行日 1969年9月1日
Published Date 1969/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914600
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はじめに二つのエピソードを紹介しよう。その一つは,ちょっと古い話だが,昨年の1の月12日のこと。その日の新聞の朝刊に,国立仙台病院での赤ちゃんの取り違え事件の記事が報道された。この日は閣議で43年度予算の政府案が決められることになっていた。大蔵省の査定一局長折衝一次宮折衝一大詰の大臣の復活要求などもすでに終り,政府もホッと一息ついていたところだが,当時の園田厚相は,このホット・ニュースを武器に,ドタン場の閣議で看護婦の増員要求をむし返した。
「赤ちゃんの人権,予算を動かす」──という劇的なスジ書きで,厚生省は「2年間に国立病院の看護婦を228人増員する—まず初年度の43年度に114人を」という予算ワクを獲得した。赤ちゃんの取り違えをはじめ,火災,誘かいなど,新生児事故のひん発は新生児を患者に数えず,産婦の付属物としてしかみていなかった医療行政にも責任があった」というのだ。これで,いままで,実際には看護婦1人で患者8人(8ベッド)をみていた産婦人科の看護基準が,他の診療科同様,看護婦1人について4ベッドに改善されることになった。
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