特集 終末期患者の看護
ベッドサイドから
末期癌患者をみとりつつ
角田 しず子
1
1癌研究会付属病院
pp.22-24
発行日 1968年11月1日
Published Date 1968/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914185
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「癌の末期」と「末期癌」とでは自ら意味が異なり,後者は早期癌に対する慣用語として使われている。これに対して前者は死に直面した場合の俗用語で,受け取り方によりいろいろに取られよう。私はあらゆる根治療法が断念され,もっぱら対症的治療を必要としている進行癌の患者について,主として精神的看護面から,日常自ら心に留めておくことなどを述べてみたい。
私ども放射線科病棟で扱っている患者の大部分は,根治的外科手術不能例である。もっぱら放射線治療を主とし,これに化学療法が併用されているが,幸いに病い癒えて家路につく例はきわめて少なく,帰宅しても再度入院する,あるいは取り残されて長い闘病生活に身を横たえる患者がほとんどである。極言すれば,死に至る病いの極印がおされている場合もある。このような患者には他疾患患者には見られない底知れぬ苦悩があり,激しい苦痛がある。毎日毎日,勤務者としてではあっても,この人々と生活を共にしている時,その悩みのなかに入って行けないもどかしさや,力になれない自分の非力を嘆くのは私のみではないと思う。
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